英国、ロシアの仮想通貨ネットワークに対する米国の制裁措置に倣って制裁

英国政府がキルギスの仮想通貨ネットワークと銀行に制裁を発表

英国政府は、ロシアが欧米諸国による制裁回避を支援し、「仮想通貨の利用を含む不透明な金融ネットワークを通じた資金移動のためにキルギスの金融セクターに依存している」として、キルギスの仮想通貨ネットワークと銀行に制裁を 発表 した。

英国は、ロシアの欧米諸国による制裁回避を支援したとして、キルギスの仮想通貨ネットワークと銀行に制裁措置を発動。ロシアにおける制裁逃れを仮想通貨ネットワークに対する米国のアプローチに倣い、仮想通貨取引所、ステーブルコイン、軍事物資の資金調達に利用されているキルギスの銀行に対して独自制裁措置を発動。

制裁対象 には、仮想通貨取引所GrinexとMeer、キルギスに拠点を置く中央アジア・キャピタル銀行、CJSC Tengricoin、Old Vector LLC、およびAltair Holding SAも含まれている。

また、制裁対象者には、ルーブルペッグ・ステーブルコインA7A5の責任者であるレオニード・シュマコフ（Leoniid Shumakov）氏、ジャニシュベク・ウル・ナザルベク（Zhanyshbek Uulu Nazarbek）氏、キャピタル銀行の責任者であるカンテミール・カパルベコビッチ・チャルバエフ（Kantemir Kaparbekovich Chalbayev）氏が含まれている。

制裁対象となった組織は、マネーロンダリング（資金洗浄）、サイバー犯罪、クレムリン（※ロシアの首都）の諜報活動ネットワークに関与している。

A7A5誕生の裏側

英国は、キルギスの企業オールド・ベクターが発行したA7A5が、欧米諸国の制裁を回避するため、ガランテックスからグリネックスへ93億ドル（約1.4兆円）を移動するために使用されたと主張している。

A7A5は、モルドバのオリガルヒ（※政治的影響力を有する新興財閥）、イラン・ミロノヴィッチ・ショア（Ilan Mironovic Shor）氏が所有する金融会社と、制裁対象となっているロシアの銀行プロムスビャズバンク・パブリック・ジョイント・ストック・カンパニーのために作成されたものだ。

イラン・ミロノヴィッチ・ショア氏は、10億ドル（約1,473.5億円）の銀行詐欺の罪で有罪判決を受けた後、2019年にモルドバから逃亡。その後、モスクワにてロシア国籍を取得している。英国のスティーブン・ドーティ（Stephen Doughty）制裁担当大臣は発表に際し、次のように指摘している。

もしクレムリンが、怪しい仮想通貨ネットワークを通じた取引のロンダリング（資金洗浄）によって、制裁の打撃を和らげようとする必死の試みを隠蔽（いんぺい）できると考えているのであれば、それは大きな間違いだ。これらの措置は「重要な時期にプーチン大統領への圧力を維持し、彼の軍資金に資金を流入させる違法ネットワークを取り締まる」ことを目的としている。

ウクライナ・ロシア和平交渉前後に課された制裁

英国は、今回の制裁は、英国と国際同盟国による「ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の確保」に向けた“倍加した努力”の結果であると指摘している。

米国の制裁は、ドナルド・トランプ大統領がウラジーミル・プーチン大統領と会談し、ウクライナ侵攻の終結に必要なことを協議する前日に発動。その後、欧米諸国はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談したが、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の直接会談の提案はロシア当局によって実現していない。