Fluid：DeFiの新たな支配者？

見落とされがちなDeFiの新たな強力な競争者Fluidは、近いうちに大手取引所に上場するのか？

執筆：Castle Labs

翻訳：AididiaoJP，Foresight News

通貨市場はDeFiの中核であり、ユーザーはさまざまな戦略を活用して特定の資産へのエクスポージャーを得ることができます。時が経つにつれ、この垂直分野はロック総額（TVL）や機能面で成長を遂げてきました。@MorphoLabs、@0xFluid、@eulerfinance、@Dolomite_ioなどの新しいプロトコルの登場により、レンディングプロトコルが実現できる機能の範囲は徐々に拡大しています。 

本レポートでは、その中の一つのプロトコル、Fluidに焦点を当てます。 

Fluidはすでに複数の機能をリリースしており、特に興味深いのはスマートデットとスマートコラテラルです。Fluidは単なるレンディングプロトコルとして見ることはできず、DEX機能も組み合わせてユーザーにより多くのサービスを提供しています。 

FluidはDEXとレンディングの両方の垂直分野で顕著な成長軌道を示しており、総市場規模（総預入額）は28億ドルを超えています。 

Fluid市場規模、出典：Dune，@dknugo 

Fluidの市場規模はプロトコル内の総預入額を示しています。この指標をTVLではなく選択した理由は、債務がプロトコル内で生産的な資産となり、取引所の流動性に貢献するためです。 

Fluidの構成要素と運用方法の概要

本セクションでは、Fluidプロトコルの構成要素を簡単に概説し、その運用方法を説明します。特に、なぜFluidが資本効率の高いプロトコルであるのかに焦点を当てます。 

Fluidは統一流動性モデルを採用しており、複数のプロトコルが流動性を共有できます。これにはFluidレンディングプロトコル、Fluid Vaults、DEXが含まれます。 

Fluidレンディングでは、ユーザーが資産を提供し利息を得ることができます。ここで提供された資産はFluidエコシステム全体で利用されるため、資本効率が向上します。また、長期的な収益機会も開かれ、このプロトコルは市場の借り手の変化に継続的に適応します。 

Fluid Vaultsは単一資産・単一債務の保管庫です。これらの保管庫は資本効率が非常に高く、最大で担保価値の95%までの高いLTV（ローン・トゥ・バリュー）を許容します。この数値はユーザーの借入能力を決定し、預け入れた担保と比較されます。 

さらに、Fluidは独自の清算メカニズムを採用しており、清算ペナルティを0.1%まで低減しています。このプロトコルは、ポジションを健全な状態に戻すために必要な金額のみを清算します。Fluidの清算プロセスはUniswap V3の設計からインスピレーションを受けており、ポジションをLTVのスケールまたはレンジで分類し、担保価値が清算価格に達した際にバッチ清算を実行します。その後、DEXアグリゲーターがこれらのバッチを流動性として利用し、清算ペナルティはトレーダーがスワップする際の割引に変換されます。 

Fluid DEXはスワップによって発生する取引手数料で流動性レイヤーに追加の収益をもたらし、これにより借り手のポジションの利息がさらに低減され、プロトコル全体の資本効率が向上します。KyberSwapやParaswapなどのさまざまなDEXアグリゲーターがFluid DEXを流動性ソースとして活用し、より深い流動性と取引量の増加を実現しています。 

Fluid上では、ユーザーは自分の担保をDEXに預け入れ、レンディング手数料と取引手数料の両方を同時に獲得でき、これがスマートコラテラル（Smart Collateral）となります。 

ユーザーが担保を使って借入を希望する場合、資産を借りるか、スマートデットポジションを借りて債務を生産的にすることができます。例えば、ユーザーはETHとUSDC/USDTプールから借入ができ、ETHを担保として預け入れ、USDC/USDTを借りることができます。その見返りとして、USDCとUSDTがウォレットに入金され、自由に利用できるほか、その流動性プールから得られる取引手数料が未払い債務の減少に充てられます。 

Fluidの最新動向と拡張

過去7日間の取引量データによると、Fluid DEXは@Uniswap、@Pancakeswap、@AerodromeFiに次いで第4位にランクインしています。FluidとJupiter Lendの提携もすでにローンチされており、この機能は今月初めからプライベートテスト段階にあり、Fluid DEX Liteもすでに稼働しています。 

さらに、Fluid DEX v2のリリースも間近に迫っています。 

7日間取引量ランキングのDEX、出典：Dune，@hagaetc 

そのほか、このプロトコルはトークンの買い戻しも予定しており、年間収益が1,000万ドルを超えています。Fluidは最近、ガバナンスフォーラムで関連内容を公開しており、この投稿は買い戻しに関する議論を開始し、3つの方法を提案しています。 

さまざまな提案方法はこちらでご覧いただけます： 

ガバナンスの承認（議論後）を経て、買い戻しは10月1日から開始され、6か月間の評価期間が設けられます。 

Jupiter Lend：FluidのSolana進出 

FluidのSolanaへの拡張は、@JupiterExchangeとの提携によって実現されました。 

JupiterはSolana上で最大のDEXアグリゲーターであり、累計取引量は9,700億ドルを超えています。また、Solana上で有数のパーペチュアル取引所およびステーキングソリューションでもあります。 

SolanaのレンディングTVLは現在35億ドルを超えており、@KaminoFinanceが主な貢献者です。Solana上のレンディング分野はFluidの成長に大きな可能性をもたらします。 

@jup_lendのパブリックベータ版は数日間のプライベートテストを経て最近ローンチされました。現在、そのTVLは2.5億ドルを超えており、Solanaブロックチェーン上で2番目に大きな通貨市場となっています（Kaminoに次ぐ）。 

Fluidと提携してローンチされたJupiter Lendは、同様の機能と効率を提供しており、スマートコラテラルとスマートデットは今年後半に同プラットフォームでリリース予定です。 

また、同プラットフォームの収益の50%はFluidに分配されます。 

Fluid DEXのイテレーション 

FluidはすでにDEX Liteをローンチしており、間もなくV2もリリース予定です。本セクションではこの2つを取り上げ、これらのイテレーションがFluidのさらなる発展にどう寄与するかを説明します。 

Fluid DEX Lite 

Fluid DEX Liteは8月にローンチされ、Fluid上のクレジットレイヤーとして、Fluid流動性レイヤーから直接借入が可能となりました。すでにUSDC-USDTペアから取引量サービスの提供を開始しています。 

このバージョンのFluid DEXはガス効率が非常に高く、他のバージョンと比較してスワップコストが約60%削減されています。関連ペアの取引量でより大きなシェアを獲得するために設計されており、Fluidはすでにこの分野で主要なプロトコルとなっています。 

ローンチ初週でFluid Liteは4,000万ドル超の取引量を生み出し、初期流動性は流動性レイヤーから借り入れた500万ドルでした。 

Fluid DEX Lite取引量、出典：Dune，@dknugo 

Fluid DEX V2 

Fluid DEX V1は2024年10月にローンチされ、Ethereum上でわずか100日間で取引量が100億ドルを超え、あらゆる分散型取引所を上回るスピードを記録しました。この成長を支えるため、FluidはV2バージョンをリリース予定で、モジュール化とパーミッションレスな拡張を念頭に設計されており、ユーザーが複数のカスタム戦略を作成できるようになっています。 

まず、V2ではプロトコル内で4種類の異なるDEXタイプが導入され、そのうち2つはV1から継承されています。FluidがサポートするDEXタイプはこの4つに限らず、ガバナンスによってさらに多くのタイプがデプロイ可能です。 

新たに導入される2つのタイプは、スマートコラテラルレンジオーダーとスマートデットレンジオーダーです。どちらも借り手が資本効率を高めるのに役立ちます。 

スマートコラテラルレンジオーダーの機能はUniswap V3に似ており、ユーザーは特定の価格レンジ内で担保を預け入れることで流動性を提供し、同時にレンディング年利（APR）を獲得できます。 

スマートデットレンジオーダーも同様の仕組みで、ユーザーは債務側で資産を借り入れてレンジオーダーを作成し、取引年利（APR）を獲得できます。 

さらに、Uniswap V4に似たhooksによるカスタムロジックや自動化、CEX-DEXアービトラージの手数料効率を高めるフラッシュアカウンティング、オンチェーンで利回りを蓄積するリミットオーダーなども導入されます。これにより、リミットオーダーは約定を待つ間もレンディング年利（APR）を獲得できます。 

結論 

Fluidは独自の機能群を提供し続けることで、成長と改善を重ね、より資本効率の高いプロトコルとなっています。 

スマートコラテラル：プラットフォームに預け入れた担保は、レンディング利息と取引手数料の両方を獲得できます。 

スマートデット：スマートデットは、債務によって生じた取引手数料で一部の債務を返済することで、ユーザーが借り入れた債務を生産的なものにします。 

統一流動性レイヤー：Fluidの統一流動性レイヤーは、より高いLTV、先進的な清算メカニズム、自動上限によるリスク管理の向上などの機能を通じて、エコシステム全体の資本効率を高めています。 

最近のJupiterとの提携によるSolanaへの拡張により、レンディング分野での市場シェアを非EVMネットワークにも拡大しました。同時に、Fluid DEX LiteとDEX V2はEVMチェーン上でのユーザー体験向上と取引量増加を目指しています。 

また、DEX V2は今年後半にSolanaでリリース予定であり、これによりFluidはSolanaのレンディングおよび取引所分野にも進出できるようになります。