Tether、爆発的なステーブルコイン市場の成長の中で5000億ドルの評価額を目指す

2025年、グローバルなステーブルコイン市場は急成長しており、SoftBankやARK Investmentのような機関投資家がTetherなどのインフラプレイヤーへの投資を進めている。

Tetherや他のステーブルコインが拡大を続ける一方で、アナリストは急速な普及が金融リスクを伴うと警告している。特に中央銀行の金利コントロールや為替レートの安定維持能力に対するリスクが指摘されている。

Tetherの拡大と投資家の関心

Tetherは200億ドル規模の資金調達ラウンドを模索していると報じられており、同社の評価額は約5000億ドルに達する可能性がある。これは世界で最も価値のある未公開企業の一つとなる可能性がある。Tetherはこの資本を、現在1,700億ドルを超えるUSDT供給を支えるコアのステーブルコイン事業以外にも多角化するために活用することを目指している。

SoftBankは暗号資産への投資を着実に拡大しており、Cathie Wood率いるARK Investも近年、複数の注目度の高い暗号資産関連の資金調達案件を追求している。

このラウンドが完了すれば、Tetherにとってこれまでで最も大規模な外部資本調達となる。Tetherの株主であるCantor Fitzgeraldがこの取引のアドバイザーを務めている。市場関係者は、この動きがステーブルコイン発行者としてのTetherの圧倒的な地位と、デジタル資産インフラへの機関投資家の信頼の高まりを反映していると述べている。

SoftBankとArk Investment Managementは、Tether Holdingsの大規模な資金調達ラウンドへの参加を協議中。この取引により、Tetherの評価額は最大5000億ドルに達する可能性があり、Tetherは約3%の株式を売却して150億～200億ドルの調達を目指している。SoftBankとArkの支援は、Tetherに新たな勢いを与えるだろう &… pic.twitter.com/LF7bc8v8Sl

— Holger Zschaepitz (@Schuldensuehner) 2025年9月26日

米国債の大量保有と増加するBitcoin準備金に支えられ、Tetherは暗号資産業界で最も収益性の高い企業の一つとなっている。2025年第2四半期には純利益49億ドルを計上し、前年同期比で277%増加した。

機関投資家の資金流入と市場の爆発的成長

ステーブルコイン分野は2025年、前例のない機関投資家の導入と世界的な規制明確化により爆発的な成長段階に入っている。Coinbaseの8月レポートで引用された分析によると、ステーブルコインの時価総額は急増し、2,750億ドルを突破した。一部のアナリストは、2028年までに市場規模が1兆ドルに達すると予測している。

この成長は、ステーブルコインが国際送金で活用されていることに起因しており、東南アジアのB2B取引の43%以上で使用されている。今年は、機関投資家がステーブルコインの統合を積極的に進める転換点となっており、調査によれば、調査対象となった機関の90%がステーブルコイン統合に向けて実際に行動を起こしており、財務管理や国際決済での活用が進んでいる。

Tetherの野心にとどまらず、他の主要プレイヤーも市場の構造を変えつつある。欧州の主要銀行9行（ING、UniCredit、Danske Bankなど）が連携し、MiCA準拠のユーロ建てステーブルコインを立ち上げ、Finastraのような企業はCircleと提携して銀行の決済フローにステーブルコインを統合している。

この動きはアジアでも勢いを増している。韓国の主要金融機関はステーブルコイン時代に備え、独自開発と戦略的パートナーシップの「ツートラック戦略」を積極的に推進し、韓国ウォン担保のステーブルコイン発行を目指している。

例えば、KB国民銀行や新韓銀行を含む少なくとも8つの主要銀行が、ウォン担保ステーブルコインの共同発行のための合弁会社およびインフラ構築を目的としたコンソーシアムを結成すると報じられている。さらに、主要銀行は米国のCircle（USDC発行者）など海外のステーブルコイン発行者と直接会談し協力を模索する一方、自社のデジタル通貨システムを用いた実際の決済に向けたPoC（概念実証）テストを行うための内部タスクフォースも設置している。

ステーブルコイン利用拡大がもたらす金融リスク

Moody’s Ratingsが2025年9月25日に発表した新たなレポートによると、デジタル通貨の保有者数は世界的に急増し、2024年には5億6200万人に達し、前年から33%増加した。東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカの新興市場が普及を牽引しており、インフレヘッジ、送金、金融包摂のために暗号資産が利用されている。

ステーブルコインの急速な拡大は、システミックな脆弱性をもたらす。広範な利用は中央銀行の金利や通貨安定のコントロールを弱める可能性があり、この傾向は「クリプト化」と呼ばれている。銀行は預金流出に直面し、貯蓄がステーブルコインや暗号ウォレットに移行することで、規制の緩い準備金が流動性危機を引き起こし、政府の介入が必要となる可能性がある。

暗号資産の普及は市場ごとに異なるリスクをもたらす / 出典: Moody’s Ratings

しかし、規制の不均一さが各国の脆弱性を高めている。先進国ではステーブルコインの規制強化が始まっており、欧州はMiCAを導入し、米国はGENIUS Actを可決、シンガポールは階層型フレームワークを適用している。一方、多くの新興市場では包括的な規則が整備されておらず、全体の3分の1未満の国しかフルスペクトラムの規制を導入していない。