11月3日、Balancerは史上最悪の攻撃を受け、1.16億ドルが盗まれました。
わずか10時間後、別の一見無関係なプロトコルであるStream Financeで出金異常が発生し始めました。24時間以内に、同プロトコルが発行するステーブルコインxUSDがペッグを外れ、1ドルから0.27ドルへと暴落しました。
もしこれが単なる2つの独立したプロトコルの不運な出来事だと思っているなら、それは間違いです。
オンチェーンデータによると、約2.85億ドルのDeFiローンがxUSD/xBTC/xETHを担保として利用しています。EulerからMorpho、SiloからGearboxまで、ほぼすべての主要レンディングプラットフォームがエクスポージャーを持っています。
さらに悪いことに、ElixirのdeUSDステーブルコインの65%（6,800万ドル）がStreamのリスクにさらされています。
つまり、上記のいずれかのプラットフォームに預金がある場合、関連するステーブルコインを保有している場合、あるいは流動性を提供している場合、あなたの資金はあなたがまだ気づいていない危機に直面している可能性があります。
なぜBalancerのハッキングがバタフライ効果を生み、Streamに問題を引き起こしたのでしょうか？あなたの資産は本当にリスクがあるのでしょうか？
私たちはこの2日間のネガティブな出来事を迅速に整理し、潜在的な資産リスクを特定するお手伝いをします。
Balancerのバタフライ効果、xUSDはパニックでペッグ外れ
xUSDのペッグ外れと影響を受ける可能性のある資産を理解するには、一見無関係な2つのプロトコルがどのように致命的な関係を持ったのかを明らかにする必要があります。
まず、老舗DeFiプロトコルのBalancerが昨日ハッキングされ、ハッカーは1億ドル以上を持ち去りました。Balancerには様々な資産があり、このニュースが広まることでDeFi市場全体がパニックに陥りました。
（関連記事： 5年間で6回の事故、損失は1億ドル超、老舗DeFiプロトコルBalancerのハッキングの歴史 ）
Stream Financeは直接的にBalancerと関係はありませんが、そのペッグ外れはパニック感情の拡大と取り付け騒ぎに起因しています。
Streamを知らない場合、簡単に言えば高利回りを追求するDeFiプロトコルです。その高利回りの方法は「ループレバレッジ」です：
簡単に言うと、ユーザーの預金を繰り返し担保にして借り入れ、投資規模を拡大します。
例えば100万ドルを預けると、Streamはこの100万ドルをAプラットフォームで担保にして80万ドルを借り、さらにその80万ドルをBプラットフォームで担保にして64万ドルを借りる、といった具合に繰り返します。最終的に、あなたの100万ドルは300万ドルの投資規模に拡大される可能性があります。
Stream自身のデータによれば、1.6億ドルのユーザー預金をこの方法で5.2億ドルの運用資産に拡大しました。この3倍以上のレバレッジは市場が安定している時には魅力的な高利回りを生み出し、Streamは多くの利回りを求めるユーザーを引き付けました。
しかし高利回りの裏には高リスクがあります。Balancerがハッキングされたニュースが広まると、DeFiユーザーの最初の反応は「自分のお金は安全か？」でした。
多くのユーザーが各プロトコルから出金を始めました。Streamのユーザーも例外ではありません；問題は、Streamのお金が必ずしも自分の手元にないことです。
ループレバレッジによって、資金は複数のレンディングプロトコルに階層的に埋め込まれています。
ユーザーの出金要求を満たすには、Streamはこれらのポジションを段階的に解消する必要があります。例えば、まずCプラットフォームのローンを返済し、担保を取り戻し、次にBプラットフォーム、さらにAプラットフォームといった具合です。このプロセスは時間がかかるだけでなく、市場がパニックに陥っている時には流動性枯渇のリスクもあります。
さらに致命的なのは、ユーザーが大量に出金しているまさにその時、Stream FinanceがTwitterで衝撃的な声明を発表したことです。「Streamの資金を管理する外部ファンドマネージャー」が約9,300万ドルの資産が消失したと報告したのです。
もともとユーザーはパニック出金していたのに、今度は1億ドル近い資金のギャップが明らかになりました。
Streamは声明で、トップクラスの法律事務所Perkins Coieを雇って調査を行っていると述べていますが、資金がどのように消えたのか、いつ回収できるのかについては一切触れていません。
このような曖昧な説明では、市場は調査結果を待ちません。ユーザーが出金遅延に気づけば、取り付け騒ぎが起こります。
xUSDはStreamが発行する「ステーブルコイン」として1ドルにペッグされているはずでした。しかし、Streamが約束を果たせない可能性があると皆が気づいた時、売りが殺到しました。11月3日深夜から今日にかけて、xUSDはすでに0.27ドル前後まで下落し、深刻なペッグ外れとなっています。
つまり、xUSDのペッグ外れは技術的な不具合ではなく、信頼の崩壊です。暗号市場の下落、Balancerのハッキングは単なる引き金であり、本当の爆弾はStream自身の高レバレッジモデル、さらには同種のDeFiプロトコルに共通する問題かもしれません。
確認すべき資産リスト
xUSDの崩壊は孤立した事件ではありません。
TwitterユーザーYAMのオンチェーン分析によると、現在約2.85億ドルのローンがStream発行のxUSD、xBTC、xETHを担保としています。これは、これらのステーブルコインや担保資産が無価値になれば、DeFiエコシステム全体に衝撃波が走ることを意味します。
仕組みが分からない場合は、以下の比喩を参考にしてください：
Streamはあなたが預けたUSDCなどのステーブルコインを使って、3種類の「借用証書」を発行します：
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xUSD：いわば「私はあなたにドルを借りている」という証明書
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xBTC：「私はあなたにBitcoinを借りている」という証明書
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xETH：「私はあなたにEthereumを借りている」という証明書
通常であれば、例えばxUSD（ドルの借用証書）をEulerプラットフォームに持ち込み、「この証書は100万ドルの価値があるので、これを担保に50万ドルを借りたい」と言えます。
しかしxUSDがペッグを外れた場合：
xUSDが1ドルから0.3ドルに下落すると、あなたが担保にした「100万ドル」は実際には30万ドルの価値しかありません。しかし、あなたは50万ドルを借りることができるため、Eulerは20万ドルの損失を被ることになります。
分かりやすく言えば、これは不良債権に近く、最終的にはElulerなどのDeFiプロトコルが穴埋めをすることになります。しかし、これらのレンディングプロトコルの多くはこの規模の不良債権に備えていない可能性があります。
さらに悪いことに、多くのプラットフォームは「ハードコーディング」された価格オラクルを使用しており、市場のリアルタイム価格ではなく「帳簿上の価値」に基づいて担保価値を判断しています。
これは通常、短期的な変動による不要な清算を避けるためですが、今となっては時限爆弾となっています。
xUSDがすでに0.3ドルに下落していても、システムは依然として1ドルの価値があると認識しており、リスクをタイムリーにコントロールできません。
YAMの分析によると、2.85億ドルの債務は複数のプラットフォームに分散され、異なる「Curator」（資金管理者）が担当しています。具体的にどのプラットフォームがこの火薬庫の上に座っているのか見てみましょう：
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最大の被害者：TelosC - 1.236億ドル
TelosCは最大の資金管理者で、Euler上で2つの主要市場を管理しています：
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Ethereumメインネット：2,985万ドル相当のETH、USDC、BTCを貸し出し
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Plasmaチェーン：9,000万USDT、さらに約400万ドルの他のステーブルコインを貸し出し
この1.2億ドルは総エクスポージャーのほぼ半分を占めています。xUSDが無価値になれば、TelosCおよびその投資家は巨額の損失を被ります。
Eulerのこれらの市場に預金がある場合、現在は正常に出金できない可能性があります。Streamが最終的に一部資金を回収できたとしても、清算や不良債権処理には長い時間がかかります。
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間接的な爆発：ElixirのdeUSD、6,800万ドル
ElixirはStreamに6,800万ドルのUSDCを貸し出しており、この金額はdeUSDステーブルコイン準備金の65%を占めています。Elixirは「1:1の償還権」を持つ唯一の債権者であると主張していますが、Streamチームは以前「弁護士が誰が何を受け取るべきかを決定するまで支払いはできない」と回答しています。
つまり、deUSDを保有している場合、そのステーブルコインの価値の3分の2はStreamが返済できるかどうかにかかっています。そして今のところ、その「できるかどうか」や「いつ」は不明です。
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その他の分散したリスクポイント
Stream上では、「Curator」（キュレーター）は資金プールを管理する専門機関または個人です。彼らはどの担保資産を受け入れるか、リスクパラメータの設定、資金の配分を決定します。
簡単に言えば、彼らはファンドマネージャーのようなもので、他人のお金を使って貸し出し収益を得ています。今や、これらの「ファンドマネージャー」はStreamの崩壊に巻き込まれています：
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MEV Capital - 2,542万ドル：MEV（最大抽出可能価値）戦略に特化した投資機関。複数のチェーンで展開しています：
例えばSonicチェーンのEuler市場では987万xUSDと500xETHを預け入れ、Avalancheでは1,760万ドルのxBTCエクスポージャー（272BTCが貸し出し）があります。
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Varlamore - 1,917万ドル：Silo Financeの主要資金提供者で、エクスポージャーは以下の通り：
Arbitrumで1,420万USDC、同市場の95%を占めます；
AvalancheとSonicで約500万ドル、Varlamoreは機関投資家や大口投資家の資金を管理しており、今回の事件で大規模な償還が発生する可能性があります。
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Re7 Labs - 1,426万ドル：Re7 LabsはPlasmaチェーンのEulerで専用のxUSD市場を開設しており、全額1,426万ドルはUSDTです。
その他、影響を受ける可能性のある小規模プレイヤーは以下の通りです：
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Mithras：230万ドル、ステーブルコインのアービトラージに特化
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Enclabs：256万ドル、SonicとPlasmaの2チェーンを跨ぐ
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TiD：38万ドル、金額は小さいが全資金の可能性あり
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Invariant Group：7.2万ドル
これらのCuratorは預けた資金でギャンブルしているわけではなく、リスクを評価しているはずです。しかし、上流プロトコルのStreamに問題が発生した場合、下流のリスク管理策はすべて受動的になってしまいます。
市場が弱気、暗号版サブプライム危機の再来か？
もし映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を見たことがあれば、今起きていることに既視感を覚えるかもしれません。
2008年、ウォール街はサブプライムローンをCDOにパッケージし、さらにCDO²にパッケージ、格付け機関はそれらにAAAのラベルを貼りました。今日、Streamはユーザー預金をループレバレッジで3倍に拡大し、xUSDは主要レンディングプラットフォームで「優良担保」として受け入れられています。歴史は繰り返さないが、確かに韻を踏んでいます。
Streamは以前、1.6億ドルの預金があると主張していましたが、実際にはこの規模の預金が最終的に5.2億ドルの資産として運用されていました。この数字はどのようにして生まれたのでしょうか？
DefiLlamaは以前からこの計算方法に疑問を呈しており、ループレンディングは本質的に同じ資金を繰り返し計上しているため、TVLが過大評価される一因となっています。
サブプライム危機の伝播経路は：住宅ローンのデフォルト→CDO崩壊→投資銀行の倒産→世界金融危機。
今回の経路は：Balancerのハッキング→Streamの取り付け騒ぎ→xUSDのペッグ外れ→2.85億ドルのローンが不良債権化→さらに多くのプロトコルが倒産する可能性。
DeFiプロトコルで高利回りのファーミングを行う場合、市場が好調な時は誰も利益の出所を気にしませんが、ネガティブな出来事が起きれば元本が失われることもあります。
DeFiプロトコルに預けている資金の本当のリスクエクスポージャーをあなたは永遠に知ることができないかもしれません。規制も保険も最後の貸し手もいないDeFiの世界では、あなたの資金の安全は自分自身で守るしかありません。
市場はあまり良くありません、どうかご無事で。
