トランプ大統領がCZ氏への恩赦を認めつつも「彼を知らない」と主張

バイナンス創設者のCZ氏に対する恩赦を巡り、トランプ大統領の発言が波紋を呼んでいる

ドナルド・トランプ（Donald Trump）大統領は、 バイナンス （Binance）の共同創設者CZことジャオ・チャンポン（趙 長鵬：Zhao Changpeng）氏を恩赦したにもかかわらず、「彼を知らない」と発言し、国内外で議論を呼んでいる。

恩赦はマネーロンダリング（資金洗浄）有罪判決を取り消すもので、政治的影響を巡り議会からも厳しい批判が相次いだ。さらに、トランプ氏の家族が関与する仮想通貨関連企業との金銭的つながりが指摘され、利益相反の可能性に注目が集まっている。

恩赦と「知らない」発言が生んだ矛盾

トランプ大統領は、CZ氏に大統領恩赦を与えたにもかかわらず、「彼が誰なのか知らない」と主張し、世論の注目を集めている。

CZ氏はバイナンスのマネーロンダリング対策の不備により2023年に有罪を認め、2024年4月に懲役4カ月の刑を受けた。その後、2025年10月にトランプ大統領の恩赦により有罪は取り消された。

CBSの報道番組「 60 Minutes 」で、トランプ大統領は「彼が誰なのかは知らない」と発言し、事件を「バイデン政権による魔女狩り」と一蹴した。また、自身や家族の仮想通貨事業との関係について問われると、「息子たちが関わっているが、私は関与していない」と説明し、関係を否定した。

インタビュー中、大統領は苛立ちを見せ、一時退席を示唆する場面もあったが、最終的に続行した。トランプ氏は「仮想通貨をやらなければシェアを中国に取られる」「仮想通貨はAI（人工知能）と同じだ」とも語り、政策的理解よりも感覚的な認識が目立った。

政治的影響とバイナンスの関与を巡る論争

ブルームバーグによれば、バイナンスはトランプ家が過半数を所有する ワールド・リバティ・ファイナンシャル への20億ドルの投資を仲介したとされる。

この取引によって同社のステーブルコイン「USD1」は評価額が20億ドルを超えたが、バイナンスとワールド・リバティの双方は恩赦との関連性を否定している。今回の決定は、超党派の議員から厳しい批判を招いた。エリザベス・ウォーレン（Elizabeth Warren）上院議員は「正義を愚弄する行為だ」と非難し、議会で仮想通貨関連法案の腐敗防止を訴えた。ジェリー・ナドラー（Jerry Nadler）下院議員は「恥ずべき権力の乱用」と述べ、行政権の行使を問題視した。

さらに、NoOnesのレイ・ユセフ（Ray Youssef）CEO（最高経営責任者）は、バイナンスが司法省との和解以降「米国政府の影響下にある」と主張。仮想通貨業界が政治的駆け引きの道具として利用されているとの見方が広がっている。

一方、トランプ大統領の恩赦に対しては、バイナンスと米政府の関係性を疑問視する声も上がっている。議会では、トランプ大統領が承認したステーブルコイン推進法案や家族企業が関与する20億ドルの取引について、利益相反の可能性を調査する動きが進んでいる。全体を通して、トランプ大統領の発言は自身の仮想通貨政策への理解不足を露呈すると同時に、政治と金融の境界をあいまいにする結果となった。

CZへの恩赦をめぐる論争は、仮想通貨と政治権力の関係を改めて浮き彫りにしている。