執筆：David，深潮 TechFlow
x402のナラティブは半月ほど盛り上がりましたが、その中で新たに生まれた資産は多くありません。
その理由の一つは、x402がAI間の決済サービスに偏っており、暗号資産でよくある「資産創造」のパターンに合致していないからです。
もう一つの理由は、x402プロトコルを中心とした暗号プロジェクトの多くがインフラ構築に注力しており、技術的なナラティブの熱に支えられているものの、短期的に実質的なプロダクトの進展が見込めないからです。
そして、x402を基盤に最初に生まれた資産である$PING（たとえmemeであっても）が、逆に最初に動きを見せた存在となりました。
11月10日、PING公式Twitterアカウント@pingobserverは、x402プロトコルに基づくトークンローンチプラットフォームc402.marketを発表し、同日22時（UTC+8）に正式ローンチ予定と告知しました。
このニュースが出ると、PINGトークンの価格は日中の安値から急騰し、24時間で約50%の上昇となりました。
要するに、c402.marketのコアメカニズムはこのプラットフォームで発行されるすべての新トークンがデフォルトで$PINGとペア取引されるという点です。
言い換えれば、PINGはもはやx402ナラティブのmemeトークンにとどまらず、c402エコシステム全体の「基軸通貨」となり、プラットフォーム上の新プロジェクトに参加するにはPINGを保有する必要があります。
これはよくある手法です。SolanaエコシステムのPump.funはSOLをmemeトークンの必需品にしましたし、Baseチェーン上の各種ローンチパッドはETHに実際のユースケースを与えました。
そして今、c402.marketはPINGにx402エコシステム内で同様の役割を担わせようとしています。
現在はブル・ベアの分岐点にあり、市場がベアマーケットだと考え新たなナラティブがないため新資産に期待しない人もいれば、アルトコインシーズンが想定外の形で到来し、局所的なチャンスがあると考える人もいます。
x402プロトコルの取引データがやや減少している今、より取引や資産創造に特化したx402コンセプトのローンチパッドを作ることは、現状の相場における局所的なチャンスかもしれません。
しかし、PINGが単なるmemeコインからいわゆるエコシステム通貨へと転換できるのでしょうか？一般投資家にとって、どんなチャンスがあり、どんなリスクが潜んでいるのでしょうか？
x402とPINGの簡単な振り返り
x402を知らない人のために、ここで簡単にまとめます：
x402はCoinbaseが2025年5月にリリースしたオープンペイメントプロトコルで、ウェブサイト、API、AIエージェントがステーブルコイン（主にUSDC）を直接利用して決済できる仕組みです。アカウント、パスワード、APIキーは不要です。
そのコアメカニズムは非常にシンプルで、1ヶ月前にも紹介しましたが、要するに有料サービスにアクセスしようとすると、サーバーがHTTP 402ステータスコード（インターネットプロトコルで以前から存在していたが未使用だった「支払いが必要」コード）を返し、支払うべき金額を通知します。
ウォレットでオンチェーン決済を行い、再リクエストすると、サーバーが認証してアクセス権（X402）を付与します。このプロセスは2秒以内で完了し、手数料はゼロです。
（関連記事： GoogleやVisaも参入、過小評価されているx402プロトコルにどんな投資チャンスがあるのか？ ）
x402が盛り上がった理由は$PINGと密接に関係しており、後者が実際に富の効果をもたらしたからです。
$PINGはx402プロトコルで最初に発行されたトークンです。ユーザーはウェブサイトでアカウント登録をする必要がなく、URLにアクセスして「402支払いが必要」の通知を受け、少額のUSDCを支払い、再リクエストすることでPINGトークンを受け取れます。
このトークン自体には特に用途はなく、meme的な存在ですが、「x402で生まれた最初のトークン」というオーラがあり、前回のインスクリプションブームを彷彿とさせるため、ここ1ヶ月間は多くの投機が集まり、上場直後には一時30倍に急騰、市場価値も6000万ドルを突破しました。
しかし、PINGが盛り上がった後、x402エコシステムはやや微妙な状況に陥りました：
プロトコルはクールで技術的ナラティブも強く、大手も後押ししていますが、PINGというmemeコイン以外にエコシステム内で参加できる「資産」が不足しています。x402はどちらかというと決済インフラであり、トークン発行ツールではありません。
関連プロジェクトの多くはAIエージェントサービスやAPIマーケットなどBtoBビジネスを展開しており、一般の暗号投資家の「トークン投機ニーズ」からは遠い存在です。
市場は新たな資産を継続的に生み出し、個人投資家が初期プロジェクトに参加できる場所を必要としています。これがc402.market誕生の背景です。
この仕組みが好きでなくても、単なる投機と決めつけて無視するのは極端な行動です。
c402.market、x402エコシステムのPump.fun？
c402.marketの公式サイトを開くと、シンプルで大胆なスローガンが目に入ります：
"The mintpad for internet capital markets"（インターネット資本市場のミントプラットフォーム）
そう、またもやお馴染みのICPナラティブです。「インターネット」と「資本市場」という壮大なワードを組み合わせ、本質的にはトークン発行プラットフォームに革命的な装いを与えようとしています。
簡単に言えば、c402.marketはx402プロトコルに基づくトークンローンチパッドで、誰でも素早くトークンを発行でき、これらのトークンは自動的に$PINGとペア取引されます。
ローンチメカニズムを説明する前に、「c402トークン」とは何かを理解する必要があります。c402は独自開発のトークン規格で、本質的にはx402プロトコルをサポートし、公開ミントメカニズムを内蔵したERC-20トークンです。公式には「internet coins」（インターネットコイン）と呼ばれています。
つまり、c402.marketsで発行されるトークンは単なるERC-20ではなく、x402決済プロトコルをネイティブでサポートしています。
理論上、これらのトークンはAIエージェントの決済シーンや、HTTP 402ステータスコードで支払いがトリガーされるあらゆるアプリケーションで直接利用できます。しかし実際には、多くの人が関心を持つのは投機的価値であり、技術的特徴ではありません。
c402.marketのローンチメカニズムはPump.funの「Bonding Curve」モデルを大いに参考にしていますが、いくつか調整が加えられています。各トークンの総供給量は10億枚に固定され、チーム配分やリザーブはありません。
公式ドキュメントによると、トークンローンチの配分構造は：
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49%は公開ミントで配布、各ミントには1 USDCの支払いが必要
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49%は自動的に流動性提供に使用
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2%は開発者報酬
ミントプロセス：
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トークン作成：誰でもトークンを作成でき、名称・コード・説明・画像を提供するだけです。作成には1 USDCの「スパム防止」費用が必要です
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ミント開始待ち：トークン作成後、一定時間後に自動的にミントが開始されます（興味深いことに、公式ドキュメントでは具体的な時間が█で隠されています。数分から十数分かもしれませんが、正式ローンチ後に確認が必要です）
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先着販売フェーズ：ユーザーは1 USDCを支払ってトークンをミントします。ミント回数には上限があります
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自動上場：すべてのミント枠が完売すると、集められたUSDCが自動的に処理されます
PINGペアの原理：USDC → PING → 流動性プール
これは全体のメカニズムで最も重要な部分であり、PINGが恩恵を受けるコアロジックです。
プロジェクトのGithubによると、c402トークンのミントが完了すると、集められたすべてのUSDCは指定されたペアトークン（初期はPINGのみ）を購入するために使われ、その後残りの49%のトークン供給とともに流動性としてプールに追加・ロックされます。
例を挙げると： 例えば、誰かが$COINというトークンを作成し、$PINGをペア資産に選んだとします。ミントフェーズで一定数の取引が必要で、仮に10,000回だとすると、10,000 USDCが集まります。
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ミントフェーズ：ユーザーがUSDCで先着購入し、10,000 USDCが集まる
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自動交換：この10,000 USDCがUniswapで自動的に$PINGに交換される
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流動性提供：購入したPING＋4.9億枚の$COIN（49%供給量）がUniswap v4の流動性プールに追加され、永久ロックされる
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開発者報酬：2,000万枚の$COIN（2%供給量）がトークン作成者に付与される。
このメカニズムは PINGにとって何を意味するのか？
c402.marketで新トークンがミント完了するたびに、USDC→PINGの強制的な買い圧力が発生します。もしプラットフォームで毎日10プロジェクトがミント完了し、各プロジェクトで10,000 USDCが集まれば、毎日10万USDC分のPING買い圧力となります。
これがc402.marketのローンチ発表でPING価格が50%急騰した理由の一つであり、市場が将来の継続的な買い圧力やエコシステムの成長期待を先取りして価格に織り込んでいると考えられます。
誰が儲かるのか？
c402.marketのフィー設計は以下の通りです：
ミンターに対して：
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各ミントで1 USDCを支払う
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そのうち2%がプラットフォーム手数料（0.02 USDC）
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ガス代（Baseチェーン上なので安価だが、支払いは必要）
トークン作成者に対して：
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トークン作成時に1 USDCの「スパム防止」費用を支払うc402
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2%のトークン供給を報酬として受け取る
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流動性プールの取引から1%の手数料分配を受け取る（一部はトークンで支払われる）c402
ドキュメントには、自分でフロントエンドを構築し、リファラー（referrer）として自分を設定すれば、その2%のプラットフォーム手数料を獲得でき、実質的にプラットフォーム手数料ゼロでミントできるとも記載されています。
初期はPINGのみがペア資産としてサポートされていますが、c402.marketのGitHubリポジトリでは「ペアトークンホワイトリスト」の申請がすでに開放されています。どのプロジェクトでもPRを提出し、自分のトークンをペアオプションに追加申請できますが、前提としてUniswap v3またはv4で十分な（ロックされた）流動性が必要で、JSON形式や画像仕様も要件を満たす必要があります。審査通過後はオンチェーンで手動ホワイトリスト化も必要です。
つまり、将来的にはc402.marketがUSDC、ETH、その他のトークンをペア資産としてサポートする可能性があり、PINGだけに限定されるわけではありません。しかし、少なくともローンチ初期は、PINGが唯一の選択肢です。
このように、c402.marketはメカニズム設計においてトークン作成者をインセンティブする傾向があり、ミンターやトレーダーだけが利益を得るわけではありません。しかし、分かる人には分かる通り、これによりプラットフォームに大量の低品質プロジェクトが溢れる可能性もあります。なぜなら、作成者には新トークンを発行し続ける経済的インセンティブがあるからです。
執筆時点で、c402.marketはまもなくローンチ（11月10日22時（UTC+8））と発表したばかりです。公式ドキュメントには、具体的なミント回数や時間枠、「賄賂メカニズム」など、多くの詳細が█で隠されています。
これらはボットによる事前準備を防ぐためか、チームが最終決定していないためかもしれません。
本当の試練は、最初のプロジェクトがローンチされ、最初の流動性が形成され、最初のトレーダーが取引を始めてから、このメカニズムが実戦でどう機能するかが明らかになるでしょう。
最後に、資産創造と新規トークン投資は暗号市場の永遠のテーマであり、今はx402コンセプトに移っただけです。新たなナラティブが少ない現状では、慎重に参加するのが現実的な選択かもしれません。
