シンガポール、トークン化されたシンガポール通貨庁（MAS）紙幣の試験運用とステーブルコインの規制を2026年に開始

シンガポール通貨庁が紙幣の試験運用とステーブルコインの規制を2026年に開始

MAS（シンガポール通貨庁）は、2026年にトークン化されたシンガポール通貨庁紙幣の試験運用を開始し、CBDC（中央銀行発行デジタル通貨）を用いた決済をめざしている事がわかった。

MASは、規制対象外ステーブルコインが安定性を維持できていないと警告し、2008年のMMF（マネー・マーケット・ファンド）危機を彷彿とさせた。MASのBLOOMイニシアチブは、統合されたデジタルエコシステムにおけるCBDCとトークン化された銀行通貨の活用を検討している。

シンガポール中央銀行は、拡張性と安全性に優れたトークン化された金融エコシステムの構築計画を進める中で、来年トークン化されたシンガポール通貨庁紙幣の発行試験を実施し、ステーブルコインを規制する法律を導入する。同中央銀行の最高責任者が2025年11月13日（木曜日）に 発表 。MASのチア・ダー・ジウン（Chia Der Jiun）専務理事は、シンガポール・フィンテック・フェスティバルの基調講演で次のように 述べて いる。

トークン化は軌道に乗りました。しかし、資産担保型トークンは脱出速度に達したでしょうか?（答えは）まだです。

法制度の安定性を目標とする

チア氏は、MASがステーブルコイン規制体制の詳細策定に取り組んでおり、法案を準備すると述べ、管轄区域内で事業を展開する発行者にとっての中核的要件として、「健全な準備金の裏付けと償還の信頼性」を重視している事を明らかにした。

MASはまた、トークン化された銀行債務と規制対象ステーブルコインを決済目的で利用することを検討するBLOOMイニシアチブの実証実験を支援。チア氏は、シンガポールの3つの銀行（DBS、OCBC、UOB）が、シンガポールドル建てホールセールCBDCの初の試験発行を用いて、銀行間翌日物貸付取引を成功させたと発表した。

発表によると、MASは、トークン化されたMAS手形をCBDCで決済できるように実証実験を拡大する。チア氏は、規制が不十分なステーブルコインがもたらすリスクを懸念し、規制されていないトークンは市場の信頼を損なうデペッグ（固定相場制の通貨の変動）を何度も経験していると指摘。同氏は2008年のMMF危機との類似点を挙げ、ある発行体の不安定さが他の発行体に波及し、より広範なエコシステムへの信頼を損なう可能性があることを強調した。

規制対象外ステーブルコインの取り締まり強化を示唆

シンガポール中央銀行は、国の金融エコシステムの強化に取り組む中で、規制対象外ステーブルコインの取り締まり強化を示唆している。

13日（木曜日）に開催されたシンガポール・フィンテック・フェスティバルで講演したMASのチア専務理事は、規制対象外ステーブルコインのペッグ維持における「不安定な実績」を懸念していると述べた。専務理事は、これらの資産の頻繁なデペッグ化を2008年のMMFの取り付け騒ぎに例え、こうした不安定性により、ステーブルコインは大規模取引の決済資産として不適切になると警告した。

今後の規制体制は、ステーブルコインが「決済適格」資産とみなされるための重要な条件として、準備金の裏付けと償還の信頼性に焦点を当てることになる。専務理事は、十分な資本を有し、十分な監督を受けている発行者のみがこれらの基準を満たすと指摘。さらに、ステーブルコインが主流の金融システムに統合されるにつれて、MASは時間をかけて枠組みを強化していく意向だと付け加えたうえで、次のように述べている。

規制対象のステーブルコインの一部がシステム上重要になる場合、規制枠組みをさらに強化し、国境を越えた規制協力を強化し、中央銀行の融資制度へのアクセスを検討する必要があるだろう。