a16zの注目すべき年次レポート：2026年Web3業界で最も私たちをワクワクさせる17のアイデア

原文タイトル： 2026年における暗号資産で私たちがワクワクしている17のこと

翻訳：佳欢，Chaincatcher

編集注：a16zは今週、各チーム（Apps, American Dynamism, Bio, Crypto, Growth, Infra, Speedrun）のパートナーによる年間「ビッグアイデア」を発表しました。以下はa16z cryptoのパートナーおよびゲスト寄稿者による未来への洞察です——テーマはエージェントとAI、ステーブルコイン、トークン化と金融、プライバシーとセキュリティ、予測市場、SNARKsおよびその他のアプリケーション、そして私たちがどのように構築していくかに及びます。

1. より高品質でスマートなステーブルコインのオン/オフランプ

昨年、ステーブルコインの取引量は推定46兆ドルに達し、歴史的な最高値を更新し続けています。この数字を直感的に捉えるために言えば：これはPayPalの取引量の20倍以上、Visa（世界最大級の決済ネットワーク）の約3倍に近く、ACH（米国の直接入金等に使われる電子ネットワーク）の取引量にも急速に迫っています。

現在、ステーブルコインは1セント未満のコストで、1秒もかからずに送金できます。しかし、未解決の課題は、これらの「デジタルドル」を人々の日常的な金融レールにどう接続するか——つまり、ステーブルコインのオン/オフランプです。

新世代のスタートアップがこのギャップを埋め、ステーブルコインをより馴染みのある決済システムや現地通貨と結びつけています。ある企業は暗号証明を使い、ユーザーが現地残高をプライベートにデジタルドルへ交換できるようにしています。ある企業は地域ネットワークを統合し、QRコードやリアルタイム決済レール、その他の機能を活用して銀行間決済を実現しています。他にも、真に相互運用可能なグローバルウォレット層や発行プラットフォームを構築し、ユーザーが日常の店舗でステーブルコインを使えるようにしています。これらのアプローチはデジタルドル経済の参加者を拡大し、ステーブルコインが主流の決済手段として直接利用されることを加速させる可能性があります。

これらのオン/オフランプが成熟し、デジタルドルが現地の決済システムや店舗ツールに直接接続されることで、新たな行動が生まれるでしょう。労働者は国境を越えてリアルタイムで給与を受け取れ、店舗は銀行口座なしでグローバルなドルを受け取れ、アプリは世界中のどのユーザーとも即時に価値を決済できます。ステーブルコインはニッチな金融ツールから、インターネットの基盤的な決済レイヤーへと根本的に変貌するでしょう。

—— Jeremy Zhang, a16z crypto エンジニアリングチーム

2. より「暗号ネイティブ」なRWAトークン化とステーブルコインの発想

銀行、フィンテック企業、資産運用会社が米国株、コモディティ、インデックス、その他の伝統的資産をオンチェーン化することに強い関心を示しています。より多くの伝統的資産がオンチェーン化される中、現在のトークン化はしばしば「スキューモーフィック」（skeuomorphic）——つまり現実世界資産の概念に根ざしており、暗号ネイティブな機能を活用していません。

しかし、Perps（永久先物）のような合成的な表現は、より深い流動性を可能にし、しばしば実現も容易です。Perpsは理解しやすいレバレッジも提供するため、暗号ネイティブなデリバティブの中で最もプロダクトマーケットフィット（PMF）が強いと私は考えています。また、新興市場株式は最も興味深い「パーピフィケーション」（perpification）資産クラスの一つだと思います。（一部の株式の「ゼロデイ満期」または0DTEオプション市場の流動性は現物市場よりも深いことが多く、これはパーピフィケーションの魅力的な実験となるでしょう。）

これはすべて「パーピフィケーション対トークン化」の問題に帰結しますが、いずれにせよ、来年はより多くの暗号ネイティブなRWAトークン化が見られるはずです。

同様の発想で、2026年には、2025年にステーブルコインが主流入りするにつれて、より多くの「ネイティブ発行（Origination）、単なるトークン化ではなく」が見られるでしょう。未償還のステーブルコイン発行量は引き続き増加します。

しかし、強固な信用基盤インフラのないステーブルコインは「ナローバンク」のように見えます。彼らは特に安全と見なされる特定の流動資産を保有しています。ナローバンクは有効なプロダクトですが、私はそれがオンチェーン経済の長期的な柱にはならないと考えています。

すでに多くの新しい資産運用会社、キュレーター、プロトコルが、オフチェーン担保に基づくオンチェーン資産担保貸付を促進し始めています。これらのローンはしばしばオフチェーンで発行され、その後トークン化されます。私は、ここでのトークン化の恩恵は少ないと考えています——おそらく既にオンチェーンのユーザーへの分配を除いて。だからこそ、債務資産はオフチェーンで発行してからトークン化するのではなく、オンチェーンでネイティブに発行されるべきです。オンチェーンでのネイティブ発行は、ローンサービングコストやバックエンド構造コストを下げ、アクセシビリティを高めます。ここでの課題はコンプライアンスと標準化ですが、ビルダーたちはすでにこれらの問題解決に取り組んでいます。

—— Guy Wuollet, a16z crypto ゼネラルパートナー

3. ステーブルコインが銀行台帳のアップグレードサイクル——そして新たな決済シナリオ——を解放する

一般的な銀行が運用するソフトウェアは、現代の開発者にとっては識別不能です。1960年代と1970年代、銀行は大型ソフトウェアシステムの初期導入者でした。第2世代のコアバンキングソフトウェアは1980年代と1990年代に始まりました（例：TemenosのGLOBUSやInfosysのFinacle）。しかし、これらすべてのソフトウェアは老朽化し、アップグレードが遅すぎます。そのため、銀行業界——特に重要なコア台帳（預金、担保、その他の義務を追跡する重要なデータベース）——は今でもしばしばメインフレーム上で稼働し、COBOLでプログラムされ、APIではなくバッチファイルインターフェースを使用しています。

世界の大部分の資産は、これら何十年も前のコア台帳に存在しています。これらのシステムは実戦で鍛えられ、規制当局から信頼され、複雑な銀行シナリオに深く統合されていますが、同時にイノベーションを阻害しています。リアルタイム決済（RTP）のような重要な機能を追加するには数ヶ月、あるいは数年かかり、技術的負債や規制の複雑さに直面します。

ここでステーブルコインの出番です。過去数年でステーブルコインがプロダクトマーケットフィットを見つけ、主流入りしただけでなく、今年は伝統的金融（TradFi）機関がこれまでにないレベルでステーブルコインを受け入れました。ステーブルコイン、トークン化預金、トークン化国債、オンチェーン債券は、銀行やフィンテック、金融機関が新しいプロダクトを構築し、新たな顧客にサービスを提供することを可能にします。さらに重要なのは、これらの組織に、何十年も信頼されてきたレガシーシステムを書き換えることなくイノベーションの新たな道を提供できることです。ステーブルコインは、機関にとって革新的な新しい方法を提供します。

—— Sam Broner, 投資パートナー

4. インターネットが銀行になる

エージェント（Agents）が大規模に登場し、より多くの商取引がユーザーのクリックではなくバックグラウンドで自動的に行われるようになると、お金（すなわち価値！）の移動方法も変わる必要があります。

「意図」に基づいてシステムが動作する世界——AIエージェントがニーズを認識し、義務を履行し、結果をトリガーして資金を移動させる世界——では、価値は今日の情報のように迅速かつ自由に流れる必要があります。これがブロックチェーン、スマートコントラクト、新しいプロトコルの役割です。

スマートコントラクトはすでに数秒でグローバルに1ドルの決済が可能です。しかし、2026年には、x402のような新しいプリミティブがこの決済をプログラム可能かつリアクティブにします：エージェントがデータ、GPU時間、APIコールのために即座に、許可なく相互に支払いを行います——請求書、照合、バッチ処理は不要です。開発者は組み込みの支払いルール、上限、監査トレースを備えたソフトウェアアップデートをリリースできます——法定通貨の統合、加盟店登録、銀行は不要です。予測市場はイベントの進行に合わせてリアルタイムで自己決済し——オッズが更新され、エージェントが取引し、グローバルに数秒で清算されます……カストディアンや取引所は不要です。

価値がこのように移動できるようになれば、「支払いフロー」はもはや独立したオペレーションレイヤーではなく、ネットワーク行動そのものになります：銀行はインターネットの基本パイプの一部となり、資産はインフラとなります。お金がインターネットでルーティング可能なデータパケットとなれば、インターネットは金融システムを支えるだけでなく……それ自体が金融システムとなるのです。

—— Christian Crowley & Pyrs Carvolth, a16z crypto 上場チーム

5. 誰もが享受できるウェルスマネジメント

パーソナライズされたウェルスマネジメントサービスは、伝統的に銀行の富裕層顧客に限定されてきました：資産クラスを横断したカスタムアドバイスやパーソナライズされたポートフォリオは高コストで運用も複雑です。しかし、より多くの資産クラスがトークン化され、暗号レールが有効化する戦略——AIによるレコメンドやコーパイロット（Co-pilots）によるパーソナライズ——は、極めて低コストで即時実行・リバランスが可能です。

これは単なるロボアドバイザーではありません；誰もがアクティブなポートフォリオ管理を受けられるのです。2025年には、伝統金融がポートフォリオへの暗号資産配分を増やしました（直接またはETPs経由）が、これは始まりに過ぎません；2026年には「資産形成」のためのプラットフォームが登場するでしょう——単なる「資産保全」ではなく——RevolutやRobinhoodのようなフィンテック企業やCoinbaseのような中央集権型取引所が技術スタックの強みを活かして市場を拡大します。

同時に、Morpho VaultsのようなDeFiツールは、資産を最適なリスク調整リターンの貸付市場に自動配分し、ポートフォリオにコア収益配分をもたらします。余剰流動残高を法定通貨ではなくステーブルコインで、伝統的なマネーマーケットファンドではなくトークン化マネーマーケットファンドで保有することで、リターンの可能性がさらに広がります。

最後に、リテール投資家は、プライベートクレジット、IPO前企業、プライベートエクイティなど、より多くの非流動性プライベート市場資産にアクセスしやすくなっています。トークン化がこれらの市場を解放しつつ、コンプライアンスや報告要件も維持します。債券から株式、プライベート資産、オルタナティブ投資まで、バランスの取れたポートフォリオの各コンポーネントがトークン化されることで、自動リバランスが可能となり、煩雑な電信送金は不要となります。

—— Maggie Hsu, a16z crypto 上場チーム

6. 「顧客を知る（KYC）」から「エージェントを知る（KYA）」へ

AIエージェント経済のボトルネックは、インテリジェンスからアイデンティティへと移行しています。

金融サービスにおいて、「非人間アイデンティティ」は現在、人間従業員の96倍の数に達しています——しかし、これらのアイデンティティは依然として未開設の「ゴースト」です。ここで欠けている重要なプリミティブがKYA：Know Your Agent（エージェントを知る）です。

人間がローンを得るために信用スコアを必要とするように、エージェントも取引のために暗号署名付きの証明書を必要とします——エージェントを委任者、その制約、その責任にリンクさせます。これが存在するまで、商人はファイアウォールでエージェントをブロックし続けるでしょう。KYCインフラを何十年もかけて構築した業界は、今や数ヶ月でKYAを理解しなければなりません。

—— Sean Neville，Circle共同創業者兼USDCアーキテクト；Catena Labs CEO

7. 私たちはAIで本質的な研究タスクを行うようになる

数学経済学者として、今年1月には消費者向けAIモデルに自分のワークフローを理解させるのは困難でした；しかし11月には、博士課程の学生に指示するように抽象的な命令をモデルに与えることができ……時には新規かつ正確な回答が返ってくることもありました。私の経験だけでなく、AIが研究により広く使われ始めているのが見えます——特に推論分野で、モデルは今や発見を直接支援し、Putnam問題（おそらく世界で最も難しい大学レベルの数学試験）を自律的に解決することさえあります。

これは依然としてオープンな課題です：この研究支援が最も役立つ分野はどこか、どのように支援するか。しかし私は、AI研究が新しいポリマス（博学多才）型の研究スタイルを可能にし、報酬を与えると予想しています：推測的なアイデア間の関係を見抜き、さらに推測的な回答から素早く推論する能力を重視するスタイルです。これらの回答は正確でないかもしれませんが、正しい方向を指し示すことができます（少なくともある種のトポロジーの下では）。皮肉なことに、これはモデルの幻覚の力を利用するようなものです：モデルが「十分に賢い」場合、抽象空間で衝突させることでナンセンスが生まれることもありますが——時には発見の扉を叩くこともあるのです。人間も直線的で明確な方向で作業しないときに最も創造的であることが多いのと同じです。

このような推論には新しいAIワークフロースタイルが必要です——単なるエージェント対エージェントではなく、より多くのエージェント-ラッピング-エージェント（agent-wrapping-agent）——モデル層が研究者の初期モデルのアプローチを評価し、段階的に真偽を見極めるのを助けます。私はこの方法で論文を書いていますし、他の人は特許検索、新しい芸術形式の発明、あるいは（残念ながら）新型スマートコントラクト攻撃の発見に使っています。

しかし：この研究用ラッピング推論エージェントの集合体を運用するには、より良いモデル間相互運用性と、各モデルの貢献を識別し適切に報酬を与える方法が必要です——どちらも暗号資産が解決を助けられる課題です。

—— Scott Kominers, a16z crypto 研究チーム・ハーバードビジネススクール教授

8. オープンネットワークの「見えない税金」

AIエージェントの台頭は、オープンネットワークに見えない税金を課し、その経済基盤を根本から破壊しつつあります。この破壊は、インターネットのコンテキスト層と実行層の間の不一致の拡大に起因します：現在、AIエージェントは広告支援型ウェブサイト（コンテキスト層）からデータを抽出し、ユーザーに利便性を提供しつつ、コンテンツ資金源（広告やサブスクリプション）を体系的に回避しています。

オープンネットワークの侵食を防ぎ（そしてAI自体を支える多様なコンテンツを維持するために）、大規模な技術的・経済的ソリューションの導入が必要です。これには次世代のスポンサーコンテンツモデル、マイクロアトリビューションシステム、その他の新しい資金調達モデルが含まれるかもしれません。既存のAIライセンス契約も財務的に持続不可能な「応急処置」に過ぎず、通常はAIによるトラフィック損失のごく一部しか補償していません。

ネットワークには価値が自動的に流れる新しい技術経済モデルが必要です。来年の重要な転換点は、静的なライセンスからリアルタイム・使用量ベースの報酬への移行となるでしょう。これは、ブロックチェーンを活用したナノペイメントや複雑なアトリビューション基準を用いて、エージェントの成功タスクに情報を提供した各エンティティに自動的に報酬を与えるシステムのテストと拡張を意味します。

—— Elizabeth Harkavy, a16z crypto 投資チーム

9. プライバシーは暗号資産における最重要の堀となる

プライバシーは、世界の金融がオンチェーンへと移行する上での重要な特性です。そして、それはほとんどの既存ブロックチェーンに欠けている特性でもあります。多くのチェーンにとって、プライバシーは後付けの発想に過ぎません。

しかし今や、プライバシー自体が十分に魅力的であり、1つのチェーンを他のすべてのチェーンと差別化できます。プライバシーはさらに重要なことをします：チェーンのロックイン効果を生み出します。言い換えれば、プライバシーネットワーク効果です。特に、性能だけで競争するのがもはや十分でない世界において。

クロスチェーンブリッジプロトコルのおかげで、すべてが公開されていれば、あるチェーンから別のチェーンへの移動は簡単です。しかし、一度プライベートにすると、そうはいきません：トークンのブリッジは簡単でも、秘密のブリッジは難しい。プライベート領域から出入りする際、チェーンやメモリプール、ネットワークトラフィックを監視する者があなたの正体を突き止めるリスクが常にあります。プライベートチェーンからパブリックチェーンへの境界——あるいは2つのプライベートチェーン間でも——は、取引時間やサイズの相関など様々なメタデータを漏らし、追跡を容易にします。

多くの差別化のない新チェーン（競争により手数料がゼロに近づき、ブロックスペースがどこでも同じになった世界）と比べて、プライバシーを持つブロックチェーンはより強いネットワーク効果を持ち得ます。現実には、「汎用」チェーンが繁栄するエコシステム、キラーアプリ、不公平な配布優位性を持たない限り、誰もそのチェーンを使ったり構築したりする理由はほとんどありません——ましてや忠誠を持つ理由もありません。

ユーザーがパブリックブロックチェーンにいる場合、他のチェーンのユーザーと簡単に取引できます——どのチェーンに参加するかは重要ではありません。プライベートブロックチェーンの場合は逆で、どのチェーンを選ぶかがより重要になります。一度参加すれば、離脱して暴露リスクを冒す可能性は低くなります。これがウィナー・テイク・オールのダイナミクスを生みます。そして、プライバシーが現実世界のほとんどのユースケースで必須であるため、少数のプライバシーチェーンが暗号資産市場の大部分を占める可能性があります。

—— Ali Yahya, a16z crypto ゼネラルパートナー

10. メッセージングの（近い）未来は量子耐性だけでなく分散型である

世界が量子コンピューティングに備える中、多くの暗号ベースのメッセージアプリ（Apple, Signal, WhatsApp）は一歩先を行き、素晴らしい仕事をしています。問題は、主要なメッセージアプリがすべて、単一組織が運営するプライベートサーバーへの信頼に依存していることです。これらのサーバーは、政府によるシャットダウン、バックドア、またはプライベートデータの引き渡しの標的となりやすいです。

量子暗号があっても、国家がサーバーをシャットダウンできるなら意味がありません；企業がプライベートサーバーの鍵を持っているなら意味がありません；あるいは企業がプライベートサーバーを所有しているだけでも意味がありません。プライベートサーバーは「私を信じて」ですが、プライベートサーバーがなければ「信じる必要がない」のです。通信に単一企業の仲介は不要です。メッセージングには、誰も信頼する必要のないオープンプロトコルが必要です。

それを実現する方法は分散型ネットワークです：プライベートサーバーはありません。単一アプリもありません。すべてオープンソースコードです。一流の暗号化——量子脅威にも対応。オープンネットワークがあれば、誰も私たちの通信能力を奪うことはできません。国家や企業がアプリをシャットダウンしても、翌日には500の新バージョンが現れます。ノードを1つ閉じても、ブロックチェーンなどの経済インセンティブが新しいノードを即座に立ち上げます。

人々がお金を所有するようにメッセージを所有できるようになれば——つまり秘密鍵を持てば——すべてが変わります。アプリは消えても、人々は常に自分のメッセージとアイデンティティをコントロールできます；エンドユーザーはアプリを所有しなくてもメッセージを所有できるのです。

これは量子耐性や暗号化だけでなく、所有権と分散化の問題です。これらがなければ、私たちが作るのは壊れない暗号化ですが、それでもシャットダウンされる可能性があります。

—— Shane Mac, XMTP Labs 共同創業者兼CEO

11. シークレット・アズ・ア・サービス

すべてのモデル、エージェント、自動化の背後には、単純な依存関係——データ——があります。しかし、今日のほとんどのデータパイプライン——モデルへの入力や出力データ——は不透明で、可変的で、監査不可能です。これは一部の消費者向けアプリでは問題ありませんが、多くの業界やユーザー（金融や医療など）は企業に機密データのプライバシー保持を求めています。これは現在、機関による現実世界資産のトークン化を阻む主な障害でもあります。

では、プライバシーを維持しつつ、安全、コンプライアンス、自治、グローバルな相互運用性を持つイノベーションをどう実現するか？方法は多々ありますが、私はデータアクセス制御に注目します：誰が機密データをコントロールするのか？どのように移動するのか？誰（または何）がアクセスできるのか？

データアクセス制御がなければ、データ機密性を保ちたい人は集中型サービスを使うかカスタム設定を構築するしかありません——これは時間もコストもかかり、伝統金融機関などがオンチェーンデータ管理の特性やメリットを完全に活用するのを妨げます。また、エージェントシステムが自律的にブラウジング、取引、意思決定を始めると、業界ユーザーや機関は「ベストエフォートの信頼」ではなく暗号保証を必要とします。

だからこそ私は「シークレット・アズ・ア・サービス」が必要だと考えます：これはプログラム可能なネイティブデータアクセスルール、クライアントサイド暗号化、分散型鍵管理を提供する新技術です。誰がどの条件下で何をどれだけの期間復号できるかを強制します……すべてオンチェーンで強制されます。検証可能なデータシステムと組み合わせることで、「シークレット」はインターネットの基本的な公共インフラの一部となり——アプリレベルのパッチ（多くの場合プライバシーは後付け）ではなく——プライバシーがコアインフラとなるのです。

—— Adeniyi Abiodun, Mysten Labs CPO兼共同創業者

12. 「コードは法律」から「仕様は法律」へ

最近のDeFiハッキングは、実戦で鍛えられたプロトコルを襲いました。これらのプロトコルは強力なチーム、入念な監査、長年の運用経験を持っていました。これらの事件は、不安な現実を浮き彫りにしました：今日の標準的なセキュリティ実践は依然として主にヒューリスティックでケースバイケースです。

成熟に向けて、DeFiセキュリティはバグモードから設計レベルの属性へ、「ベストエフォート」から「原則的」アプローチへと移行する必要があります：

• 静的/デプロイ前（テスト、監査、形式検証）では、手動で選んだ局所的不変条件の検証ではなく、グローバル不変条件の体系的な証明が必要です。AI支援の証明ツールを構築する複数のチームが、仕様の記述、不変条件の提案、過去は高コストで実施できなかった手動証明作業の大部分を肩代わりできるようになっています。

• 動的/デプロイ後（ランタイム監視、ランタイム強制など）では、不変条件がリアルタイムの「ガードレール」となります：最後の防衛線です。これらのガードレールはランタイムアサーションとして直接コード化され、すべての取引が満たす必要があります。

今や、すべてのバグが捕捉されると仮定するのではなく、コード自体の重要なセキュリティ属性を強制し、それらを違反する取引は自動的にロールバックされます。

これは理論だけではありません。実際、これまでほぼすべての攻撃は実行中にこれらのチェックのいずれかをトリガーし、ハッキングを防げた可能性があります。かつて流行した「コードは法律」（code is law）は「仕様は法律」（spec is law）へと進化しています：新しいタイプの攻撃であっても、システムの完全性を保つ同じセキュリティ属性を満たす必要があり、残る攻撃は些細か、極めて困難になります。

—— Daejun Park, a16z crypto エンジニアリングチーム

13. 予測市場はより大きく、広く、スマートになる

予測市場はすでに主流入りしており、来年は暗号資産やAIとの交差により、さらに大きく、広く、スマートになるでしょう——同時にビルダーに新たな重要課題を突きつけます。

まず、より多くのコントラクトが上場されます。これにより、主要選挙や地政学的イベントだけでなく、さまざまな細かな結果や複雑で交差するイベントについてもリアルタイムのオッズにアクセスできるようになります。これらの新しいコントラクトがより多くの情報を浮かび上がらせ、ニュースエコシステムの一部となることで、重要な社会的課題が生じます：この情報の価値をどうバランスさせるか、より透明で監査可能な設計をどう行うか——これには暗号資産が役立ちます。

より多くのコントラクト量を処理するために、真実に合意する新しい方法が必要です。中央集権型プラットフォームの決議は重要ですが、「ゼレンスキーのスーツ市場」や「ベネズエラ選挙市場」のような論争事例はその限界を示しています。これらのエッジケースを解決し、予測市場をより有用なアプリケーションに拡張するために、新しい分散型ガバナンスやLLMオラクルが論争結果の真実を決定するのに役立ちます。

AIは予測市場に新たな可能性を開きます——エージェントがリアルタイムデータに基づき自動でベットしたり、新しい合成コントラクトを作成したり、エージェント行動に基づき市場メカニズムを動的に調整したりできます。これにより予測市場はよりスマートで反応的になり、リアルタイムリスク評価、自動ヘッジ、AI駆動予測などの新ユースケースが解放されるかもしれません。

しかし、規模が拡大するにつれ、ビルダーは新たな課題に直面します：市場の操作耐性の確保、論争解決の複雑性への対応、情報の透明性とプライバシーのバランスなどです。これらの課題は、高度な暗号証明や分散型仲裁システムなどのイノベーションを促進するでしょう。

—— Andy Hall, a16z crypto 研究顧問・スタンフォード大学政治経済学教授

14. 「ステークドメディア（Staked Media）」の台頭

伝統的なメディアモデルの亀裂——およびそのいわゆる客観性——はしばらく前から明らかになっています。インターネットは誰もが発言できる場を与え、より多くの運営者、実務家、ビルダーが直接公衆に声を届けています。彼らの意見は世界における自らの利害（Stakes）を反映しており、逆説的に、聴衆はしばしばそれを尊重します——それらの利害があるにもかかわらずではなく、むしろあるからこそです。

ここで新しいのは、ソーシャルメディアの台頭ではなく、人々が公開かつ検証可能なコミットメントを行える暗号ツールの登場です。AIによって無限のコンテンツ（真実でも虚構でも、どんな意見や人格も主張できる）が安価かつ容易に生成できるようになると、人々（あるいはボット）の発言だけに頼るのはもはや十分ではありません。

トークン化資産、プログラム可能なロック、予測市場、オンチェーン履歴は、より堅固な信頼基盤を提供します：コメンテーターは主張を発表し、言行一致を証明できます（putting their money where their mouth is）。ポッドキャスターはトークンをロックして投機や「ポンプ＆ダンプ」をしないことを証明できます。アナリストは予測を公開決済市場にリンクし、監査可能な記録を作成できます。

これが私の考える「ステークドメディア（Staked Media）」の初期形態です：単に「利害関係（skin in the game）」を受け入れるだけでなく、証明を提供するメディア形態です。このモデルでは、信頼性は超然を装うことや根拠のない主張から来るのではなく、透明かつ検証可能なコミットメントを行える利害を持つことから生まれます。ステークドメディアは他のメディア形態を置き換えるものではなく、既存のものを補完します。それは新しいシグナルを提供します：単に「私を信じて、私は中立だ」ではなく、「これが私のリスクであり、あなたが私の真偽をどうチェックできるか」です。

—— Robert Hackett, a16z crypto 編集チーム

15. 暗号技術がブロックチェーンを超えた新しいプリミティブを提供する

長年、SNARKs——計算を再実行せずに検証できる暗号証明——は主にブロックチェーン技術でした。そのオーバーヘッドは非常に高く、計算を証明するのに単に実行するより100万倍の作業が必要でした。数千のバリデータ間で分担する場合は価値がありますが、それ以外では非現実的でした。

これは変わろうとしています。2026年には、zkVMプローバーのオーバーヘッドは約1万倍に下がり、メモリ使用量も数百MBとなります——スマホで動かせるほど高速で、どこでも使えるほど安価です。なぜ1万倍がマジックナンバーかというと、ハイエンドGPUの並列スループットはノートPCのCPUの約1万倍だからです。2026年末までに、単一GPUでCPU実行の証明をリアルタイム生成できるようになります。

これにより、古い研究論文にあったビジョン——検証可能なクラウドコンピューティング（Verifiable Cloud Computing）——が解放されます。どうせクラウドでCPUワークロードを実行するなら——計算が重くなくGPU化不要、専門知識がない、レガシー理由など——合理的なコストで正しさの暗号証明が得られます。プローバーはすでにGPU最適化されています；あなたのコードはそうでなくても構いません。

—— Justin Thaler, a16z crypto 研究チーム・ジョージタウン大学コンピュータサイエンス准教授

16. トレーディングは中継点であり、暗号ビジネスの終着点ではない

今日、うまく運営されている暗号企業（ステーブルコインや一部のコアインフラを除く）は、すでにトレーディングに転換したか、転換しつつあります。しかし、「すべての暗号企業が取引プラットフォームになる」なら、皆はどこに行くのでしょう？これだけ多くのプレイヤーが同じことをしていれば、大衆のマインドシェアを食い合い、少数の大勝者しか残りません。つまり、あまりにも早くトレーディングに転換した企業は、より防御力があり持続的なビジネスを築く機会を逃しているのです。

財務状況を改善しようとする創業者には大いに同情しますが、即時のプロダクトマーケットフィット（PMF）を追い求めることにも代償があります。この問題は暗号分野で特に顕著です。トークンや投機を巡る独特のダイナミクスが、創業者をPMF探しの旅で即時満足の道へと誘うことがあるからです……いわば「マシュマロテスト」（遅延満足テスト）です。

トレーディング自体は悪くありません——重要な市場機能です——しかし、それが最終目的地である必要はありません。「プロダクト」部分に集中する創業者こそが、最終的により大きな勝者となるかもしれません。

—— Arianna Simpson, a16z crypto ゼネラルパートナー

17. ブロックチェーンの真の可能性を解き放つ

過去10年、米国でブロックチェーンネットワークを構築する最大の障害の一つは、法律の不確実性でした。証券法が過度に拡張され選択的に執行され、創業者は「企業」ではなく「ネットワーク」のために設計された規制枠組みに入ることを強いられました。長年、法的リスクの軽減がプロダクト戦略に取って代わり、エンジニアは弁護士に道を譲らざるを得ませんでした。

このダイナミクスは多くの奇妙な歪みを生みました：創業者は透明性を避けるよう指示され、トークン配布は法的に恣意的になり、ガバナンスは見せかけとなり、組織構造も法的カバーのために最適化されました。トークンは経済価値やビジネスモデルを避けるよう設計されました。さらに悪いことに、ルールを無視した暗号プロジェクトが、誠実なビルダーよりも成功することが多かったのです。

しかし、暗号市場構造規制——この法案が可決される可能性はこれまでになく高まっています——は、来年これらすべての歪みを解消する可能性を秘めています。もし可決されれば、この立法は透明性を促進し、明確な基準を確立し、「執行ルーレット」に代わる明確で構造化された資金調達、トークン発行、分散化の道筋を提供します。GENIUS法案に続き、ステーブルコインの普及は爆発的に拡大しました；暗号市場構造を巡る立法はさらに大きな転換となりますが、今度はネットワークに向けたものです。

言い換えれば、このような規制により、ブロックチェーンネットワークはネットワークらしく——オープン、自律、組み合わせ可能、信頼できる中立、分散型——に運営できるようになります。

—— Miles Jennings, a16z crypto 政策チーム・総法務顧問